89小話

 89

 白。| 1

気付いたら、白くうねる一本道を歩いていた。

それとは濃度の違う白い空を見上げると、小さく煙をあげる都が見えた。

トレードマークの航空帽は、
機関部と共に墜落するときに、どこかへ放り投げてしまった。

着物は血と埃でドロドロだが、身体は痛まない。

「死んでしまったんだなぁ」と無感動に思い、
ヘイハチは、ついいつもの癖でうっすら微笑んだ。

何も、何もない、白い世界。

自身が前に進んでいるのか、道の方が後ろへ流れているのか、
ゆっくりなのか、速いのか、それすら朧で……ヘイハチはあの鮮やかな色を想う。



あの紅は……美しく舞っているのだろうか。

金糸を靡かせて、返り血を浴びて。

刃をリンと響かせて、切なくなるほどに強い、あなたは。