89小話

 89

 白。| 2

ふと、後ろから足音らしきものが聞こえ、ヘイハチは足を止めた。

冥府への道は、案外人通りが多いものなのだな、と、呑気に思う。

先は長いみたいだし、急ぐ旅でもない訳だし、
偶然行き会った誰かと世間話でもしながら歩くのも悪くない。

ヘイハチはゆっくりと振り返った。

前方は遥かに曲がりくねった道が続いているというのに、
元来た道は自分の手さえも見失いそうな白い霧だ。



さて、どんなお方が現れるのやら……。



ねっとりとした濃い霧の中。

目を凝らすヘイハチの前に、
浮き上がるようにゆっくりと、
滲むようにじんわりと、
鮮やかな色が近付いて来た。