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白。| 2
ふと、後ろから足音らしきものが聞こえ、ヘイハチは足を止めた。
冥府への道は、案外人通りが多いものなのだな、と、呑気に思う。
先は長いみたいだし、急ぐ旅でもない訳だし、
偶然行き会った誰かと世間話でもしながら歩くのも悪くない。
ヘイハチはゆっくりと振り返った。
前方は遥かに曲がりくねった道が続いているというのに、
元来た道は自分の手さえも見失いそうな白い霧だ。
さて、どんなお方が現れるのやら……。
ねっとりとした濃い霧の中。
目を凝らすヘイハチの前に、
浮き上がるようにゆっくりと、
滲むようにじんわりと、
鮮やかな色が近付いて来た。