アルコールスパイラル 〜Happy Halloween 2009 | 6
<4.ヴァンパイア>
かくして俺はカウンターに戻った。
バーテンダーはカウンター越しにしか客の人生に関わらない人種だって、どっかの詩人も言ってるぜ。
「ミントジュレップ、ブランデーで」
「了解! って、あれ? いいんですか、そんな可愛いので」
アフロディーテだ。
「徹夜明けなんだ、今日は控えている」
「あーい、お疲れッス!」
道理で、ちょっとやつれ顔。それがまた、今日のヴァンパイアの仮装に似合っている。この人、やつれても綺麗だよね。真っ赤な唇に、口の中まで真っ赤なのは、騙されて食紅を飲んだからだそうです。ハメたのはもちろん師匠です。
「惜しいですね、せっかく瞬に可愛いの着せたのに」
こっそり呟くと、アフロディーテはふふ、と微笑んだ。遠くから見てるだけで楽しいって、そういう顔。
なんだかなー、今のこの二人、親子みたいだよね。そりゃ白猫コスは頓狂で、俺の「アフロさんて実は変態?」疑惑も強まったというのに、この微笑ましさは何?
あ、瞬が来た。
と、途端に上がるアフロさんのテンション。
隠しきれてません。
「盟、瞬にエッグノックでも作ってやってくれ。アルコールは入れるな」
バレてます?
「ヴァンパイアは人間の血を吸えない時、薔薇のエッセンスでしのぐんでしょう?」
「それは少女漫画だ」
「そうなの? 残念。でも似合うよね」
「瞬、もし私が吸血鬼だったらどうする?」
「え…」
にっこりとアフロディーテが問う。なかなか核心をついていると思う。
「こうやって一緒にいて、でも内心、血を吸いたいと思っていたら」
「…アフロだったらいい」
「お前がヴァンパイアになってしまっても?」
「…アフロが辛い思いをするのなら、僕も吸血鬼になった方がいい」
「そう…」
アフロディーテはおもむろに、瞬の肩に手をかけた。
そのまま、唇が首筋に近づく。
「ちょっ、アフロ… 痛…」
ガタン。
くずおれたのは、アフロディーテだった。
瞬が受け止めたので落下はしなかったけれど、アフロディーテはそのまま瞬に身を預けて、寝入っていた。