Forbitten Love | 7

鼻先に香る匂いに瞬は瞳を瞬かせた。
「ん…」
ころん、と寝返りを打つと身体の上や周りにいた小鳥たちが
ばさばさっと飛び立ち、戻って来る。
また瞬の傍へと羽をおろすと瞬の傍で遊んでいるようだ。
「寝ちゃった…」
そ…と目に入った一羽の鳥に手を伸ばす。
鳥は警戒するどころか、小さく首を傾げ瞬を見つめると嬉しそうに囀る。
綺麗な水色の羽を持つ鳥。
「あ、…れ?」
瞬の視界に入ったのはその小鳥よりももっと輝く水色の何か。
ぱちぱちっと瞬は瞬きをするとその方向を見つめた。
すると。
「起きたかい?」
自分へとかけられた声。
水色の何か。
そう、それはアフロディーテ。
アフロディーテの眩いまでに輝く髪の毛であったのだ。
「アフロディーテ」
「おはよう…とでも言うのか?」
「あっ」
瞬はアフロディーテの言葉に自分がまだ寝転がっていたことに気付き
慌てて身を起こす。
真っ赤になってしまった瞬をアフロディーテは目を細めて見つめた。
「キミは…自然に愛されているな。小鳥たちがずっと傍にいた」
瞬はアフロディーテに言われるとふと周りに居た鳥たちを見つめる。
鳥たちは瞬の周りで羽ばたいたりして遊んでいる。
しかし瞬が発した言葉は。
「アフロディーテは花に愛されているでしょ?」
「え?」
アフロディーテにとっても意外な言葉だったのであろう。
一瞬驚き、言葉を失う。
しかし瞬はそんなアフロディーテにはお構いなしに言葉を続ける。
「だって、ここの花たちは皆アフロディーテが大好きだよ?
アフロディーテが育てているんでしょ?」
僅かだけど貴方の小宇宙が香るの、と瞬は言った。
アフロディーテは驚いた。
“花から小宇宙が香る”などと今まで言われたことなどないのだ。
自分自身、そんなものは感じたことなどない。
だが。
瞬であればそれを感じることができても不思議ではない気がしていた。
「……そうか?」
「うん。皆、綺麗だね。沙織さん…あ、女神が言ってたんだ。綺麗な花畑だって。
それで来てみたら思ってた以上だった。それですごいなぁ、って感じてたら
アフロディーテの小宇宙が感じられたから、ああ、そうなんだって」
まるであたりまえのことのように言う瞬。
「すごく、温かい小宇宙なんだ」
――――貴方の小宇宙は温かい。
瞬は言った。
「私の小宇宙が?」
初めて言われた。
今までやってきたことの全てが洗われるようだった。
そのように言われるとは思ってもみないことだったのだから。
「アフロディーテ?」
「いや、嬉しいよ」
不思議そうに小首を傾げて自分を見つめる瞬にアフロディーテは微笑んだ。
瞬もその笑顔に返すように、花が綻ぶように微笑んだ。
周りの小鳥たちも嬉しげに囀る。
「アンドロメダ…いや、瞬…私は、許されるのだろうか?」
何が、とは言わない。
何が、とは聞かずに瞬は微笑み頷いた。
その微笑を見、アフロディーテはそっと瞬を抱き締めた。
まるで壊れ物を扱うかのように。
「アフロディーテ?」
「暫く、このままで居させてくれ」
言葉にはしない想いが溢れ出る。