彼岸花 〜冥瞬戦国絵巻 | 7

冥王軍との戦からしばらく後、沙織はある寺を訪ねていた。
出迎えてくれた尼僧はにこやかに、でも切なそうに沙織を本堂に案内する。
「どう? 寺の暮らしにはもう慣れた?」
「ええ、私しか居ませんし。今はこうやって静かに暮らせるのがありがたくて」
そう言って静かに笑った尼僧に沙織は涙を禁じえない。
「ごめんなさいね」
「いいえ。誰のせいでもないんです。それが戦国の世の慣わしなんですから」
だから泣かないでと尼僧は沙織の背中をなでた。
「瞬、あなた」
「大丈夫です。私は――」
たった数日、彼の館で過ごした。
あの時間だけ、私達は恋人同士だったと。





ハーデスと冥王軍は聖域軍によって手厚く葬られた。
彼らが埋葬された寺はのちに尼寺となり、ひとりの尼僧が乱世から離れて余生を送ったとされる。
その尼僧がかつての紅姫武将であったことは、ただ歴史のみが知っている。



≪終≫