星屑の革紐 | 11
こうしてハーデスと瞬の間にはいつもの穏やかな日常が戻ってきたのだった。
しかし日常でなくなった方も約一名いる。言わずと知れたゼウスだった。
ヘスティアのフライパンアタックでぼこぼこになった彼は冥界の大河女神ステュクスの前に引きずり出され、
二度と瞬とハーデスの仲を邪魔しないように誓わされたのである。
この誓いを破れば神といえども罰を受けることになる。
10年間は神の座を下ろされる。
そればかりではなく、一年は死んだようになり、九年は人間に仕えるという苦役を強いられるのだ。
こうして事件は終わった。
「ハーデス、預かり物を返しておくぞ」
ゼウスをぼこってすっきりしたのだろう、ヘラがそれはもう眩しいほどの笑顔でハーデスにブルーベルベットの小箱を返した。
「姉上……」
「祝福しておいたぞ。結婚式の時はまた格別の祝いをやろうな」
「ありがとう」
姉に礼を言い、ハーデスは瞬を振り返った。
「瞬」
「はい」
アテナやヘラといった神々、それに聖闘士に冥闘士たちが見守る中でハーデスは瞬の左手を取った。
そして。
「瞬、余の妃となって余を支える光になってほしい」
「……私も、精一杯頑張ります」
見つめあってにこりと笑い、ハーデスは瞬の左手の薬指にガーネットの指輪を差し入れた。
サイズも気持ちもぴったり一致。
ハーデスは迷わず瞬を抱きしめた。
周囲におめでとうの歓声と拍手が鳴り響く。
これより2年後、瞬は正式に冥王の妻となり、冥府に降っていく。
けれどそれは別離ではなく新しい物語の始まり。
『我らの歩む道が真直ぐに導かれるように』
星屑の革紐は今日も変わらずふたりを結び付けているのだから
≪終≫