アフロ瞬
Angel Trip | 6
「だって、起きたらアフロディーテがいないんだもん!それに寝ぼけていたし…」
やっと落ち着いた瞬は、未だ自分を離そうとしないアフロディーテを見上げると、ついさっき命を落としそうになったばかりだというのにぷんぷんと怒りながら抗議してきた。
アフロディーテは半ば呆れて、半ば安堵して溜息をついた。
「なんだ、私が悪いのか?…それにしても、寝ぼけて死なれてはかなわないな…」
「そうだよね〜、寝ぼけて、しかも毒薔薇中毒で死んだなんて言ったら沙織さん、憤死するかもしれないよね」
瞬はそう言うと、ころころと笑う。つられてアフロディーテも微笑んでいた。
この笑顔を失わずに済んで良かったと心から思う。
アフロディーテは急に真顔になると、瞬を正面からしっかりと見つめて言った。
「すまなかった、瞬。もう毒薔薇は作らない。」
瞬はたっぷり10秒は驚いた顔で固まっていた。
はっと気を取り直し、でも…と言いかけた唇をアフロディーテの人差し指がそっと押さえる。
「毒薔薇に頼らなくとも敵に後れを取るような私ではない」
いつものふてぶてしいまでに自信満々の強い口調でそう言うアフロディーテ。
しかし、その目は優しく細められていた。
「…そうすれば、一緒に薔薇の手入れができるだろう?……手伝ってくれるか?」
アフロディーテの言葉に、さっき泣きやんだばかりの瞬の瞳にまた涙が盛り上がってくる。
瞬が大きくうなずくと、涙が一粒、頬に零れ落ちた。
双魚宮の最深部、アフロディーテの薔薇園へと続く扉は、今はすべて開け放たれている。
耳を澄ますと、辺りに漂う薔薇の甘い香りにのって、瞬の笑い声が微かに聞こえるだろう。
美しいけれど、どこか寒々しかった薔薇園は、新たな天使を迎えてあたたかな風に包まれている……。
fin.