氷河瞬
ものがたりは未だはじまらず
茶色く色付いたけやきの並木道、城戸邸を出てからずっと、瞬は俺の前を歩いていた。
俺は自分で散歩に誘ったはずなのに、瞬に一向に話しかけることも出来ず、ただ歩いている。
いつもは隣で他愛のない話をし、時折俺の顔を見上げては微笑んでくれる彼は、今日はそれをしてくれることもなく、いつの間にか随分と離れてしまった。
それでも俺は急いで追いかけるでもなく、ゆるゆると歩を進める。
黄金色の葉を踏みしめるその音は、カサカサと乾いて、移り変わる季節を実感させた。
俺は、柄でもなく感傷的な気分になった。
踊るように歩く瞬の背中を目で追いながら、俺は思いを巡らせてみた。