氷河瞬
ものがたりは未だはじまらず | 2
100人の孤児が城戸邸に集められた日。
兄の後ろに庇われるように立つ、子供の目からも可愛らしい存在を見つけた。
愛するマーマを亡くし、見知らぬ国に言葉も通じず、打解けようともしない独りぼっちの俺に、その子…瞬はにっこりと笑って手を差し伸べてくれた。
おずおずと握ると、その手はとても温かかった。
マーマを失ってから初めて差し伸べられた温かい手。
彼の手のひらから伝わってくる優しいぬくもりに、俺の目の前はあっという間にぼやけて、涙が溢れ出していた。
そんな俺につられたのか、瞬の大きな目からもぽろぽろと涙が零れ落ちていた。
次々と薔薇色の頬を滑る涙がとても綺麗で、俺は不思議な気持ちで眺めながら、この温かさを二度と失いたくないと思った。
その後、100人は聖闘士になるべく世界各地の修行地にバラバラに送られていった。
中でも幼くか弱い瞬は、誰もが絶対に生き残れはしないだろうと思っていた。
そして、年を重ねる毎により強くマーマを想うようになった俺は、瞬の事などすっかり忘れていたのだった。
まさか、また生きてふたたび会えるとは。