抜け駆けなんて許しません! | 5

「ここまで来れば大丈夫だろう。」

「はあはあ…。片倉殿のおかげで助かりました!ありがとうございまする!」

二人に追い付かれないよう全力疾走で走って来た小十郎と幸村は、いつの間にか木の生い茂る森の中まで来ていた。

「いや…、政宗様がすまねぇことをしたな…。」

「いえ…、そのおかげでこうして片倉殿にお会い出来ましたので…!」

「真田…!」

頬をほんのりと赤く 染めて呟く姿に、思わず幸村を抱きしめそうになった小十郎だったが、近くで二人分の足音が聞こえたため慌てて息を潜めた。

『たく…、あの二人どこに隠れやがったんだ!?』
『おかしいなぁ…。この森の何処かにいるのは確実だと思うんだけど…。』

小十郎の予想通り、足音は政宗と佐助の物だったが、運のいいことに二人は此方に気づくことなく通りすぎていった。

「片倉殿…、何か言ってくだされ…。」

告白に近いような台詞を言ってしまった幸村は、不安そうな顔で窺うように小十郎を見ている。

「真田…、Trick or treat。」

悩んだ末にたどたどしい英語を口にした小十郎に、幸村は恥じらいながらも返事を返す。

「生憎いまは何も持ってはおりませぬが…、某、片倉殿にならいたずらされても良いと思ってしまったでござる…。」

「真田、後悔してももう遅いぞ?」

幸村の発言により完全にその気になった小十郎が幸村を草むらに押し倒そうとしたが、引き返してきた政宗と佐助に今度こそ見つかってしまい、再び幸村を連れて逃げるはめになったのだった。

その後、例の衣装はどうなったかというと、力一杯握り締めたまま森の中を走り回ったせいでボロボロになってしまい、大変な労力と大金を費やしたにもかかわらず、一度も幸村に着られることもなく掃除用の雑巾へと姿を変えたのだそうだ。


END