それは甘い恋の味 | 1
いま、京の都では祭りが開かれていた。
そのため、祭り好きな京の人々は大人も子供も大騒ぎである。
そんなうるさいくらいに賑やかなこの場所で、ある一人の男が重大な決意をしていた。
『今日こそ幸と手を繋ぐ!』
そう。
この男、前田慶次は、もう恋仲になって半年はたつであろう真田幸村と、いまだに手も繋いだことがなかったのだ。
もちろん、慶次が奥手だからというわけではない。
むしろ人より手が早いほうだ。
こうして幸村と恋仲になれたのだって、慶次が半ば強引に好きだと言わせたようなものだからだ。
ならば何故、そんな男が半年もの間恋人の手すら握れないでいるのかといえば、その恋人が極度の恥ずかしがりやだからである。
それも、少し手が触れ合っただけでも大騒ぎするほどのだ。
それでも慶次は諦めずに何度も幸村の手を握ろうと試みてはいたのだが、その度に破廉恥とひっぱたかれては失敗に終わっていたのだった。
普通ならここまで拒まれ続ければ諦めるものだが、慶次は違った。
普段あまり使わない頭をフルに回転させて考えた結果、初心な幸村と手を繋ぐためには、手を握っても恥ずかしくない状況を作るしかないと思ったのだ。
そこで、そんな状況を作りやすい場所として慶次が選んだのが、この祭りである。
祭りならば、はぐれないようにするため。という理由ですんなりと手を繋ぐことが出来ると思ったらしい。
それにこの人混みの中なら、手を繋いでも誰かにバレる心配はないので、幸村が拒む可能性は極めて低いとも踏んだようだ。
そこまで計算した慶次が幸村を祭りに誘ったのがちょうど一週間前。
もちろん、祭り好きな幸村は大喜びでその誘いにのった。
そして、あれから一週間たった今日。
慶次は待ち合わせ場所で幸村が来るのを待っている最中である。