89小話

 89

 白。| 3

「キュウゾウ殿!?」


白い世界から溶け出して来たその人は、
ヘイハチが想ってやまない緋色の剣士だった。

驚きに目を見開くヘイハチの前に、
キュウゾウはいつもの様子で静かに歩み寄り、立ち止まった。

せめて最後に一目、キュウゾウに逢いたかった……
そう思っている自分に、カミサマが幻を見せてくれているのでは。

咄嗟にそう思うくらい、ヘイハチにはキュウゾウがココにいる事が、
信じられない。

「あなた程のお人がどうしてっ!?」

知らず拳を握りしめ、一歩キュウゾウに近付いたヘイハチは、
彼のコートに散らばる銃痕と夥しい血の跡に目を見張った。

鼻を突く血液のにおいに、ギリリと奥歯を噛み締める。

「……不慮の……事故だ」

俯き加減のキュウゾウは、
いつもと変わらぬ無表情の淡々とした声色だった。

静かに澄んだ二つの紅玉が、ヘイハチを見つめていた。