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白。| 3
「キュウゾウ殿!?」
白い世界から溶け出して来たその人は、
ヘイハチが想ってやまない緋色の剣士だった。
驚きに目を見開くヘイハチの前に、
キュウゾウはいつもの様子で静かに歩み寄り、立ち止まった。
せめて最後に一目、キュウゾウに逢いたかった……
そう思っている自分に、カミサマが幻を見せてくれているのでは。
咄嗟にそう思うくらい、ヘイハチにはキュウゾウがココにいる事が、
信じられない。
「あなた程のお人がどうしてっ!?」
知らず拳を握りしめ、一歩キュウゾウに近付いたヘイハチは、
彼のコートに散らばる銃痕と夥しい血の跡に目を見張った。
鼻を突く血液のにおいに、ギリリと奥歯を噛み締める。
「……不慮の……事故だ」
俯き加減のキュウゾウは、
いつもと変わらぬ無表情の淡々とした声色だった。
静かに澄んだ二つの紅玉が、ヘイハチを見つめていた。