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白。| 5
「もう、この手を離しません。二度と。生まれ変わったとしても、絶対に」
ヘイハチは、キュウゾウの白い手を包む自分の両手にぎゅううっと力を込めた。
ヘイハチの想いとぬくもりが、キュウゾウに伝わる様に。
「……林田……」
少し困った様に眉根を寄せたキュウゾウの、目元が僅かに柔らかく細められる。
こんな表情もするのだ。キュウゾウは。
もっと見たい……見てみたかった。
気を付けていないと絶対に見逃してしまう、キュウゾウの微かな心の移ろいを。
ほんとうは豊かな人なのだと気付いているのは、自分だけだと思うから。
「だからキュウゾウ、来世では笑ってください」
ヘイハチは開眼してキュウゾウを見つめた。
「……ヘイハチ……」
キュウゾウは、その祈りにも似た真摯な姿を赤い双瞳に映し、
ヘイハチの手をしっかりと握り返した。
「さ、行きましょうか!」
ヘイハチは、いつもの調子でにぱっと笑うとくるりと前を向き、
笑顔全開でキュウゾウの手を繋いだまま、歩き出した。
白い、白い、どこかへ。