ねこまつりのよるに| 2

「は〜いっ」
幾分幼い声が聞こえたかと思うと、瞬がアテナの後ろから飛び出した。
「あふろ!」

満面の笑みを浮かべているのは良いが、彼の頭からはふわふわとした白い猫耳が、腰からは白くて長い尻尾が伸びている。
「し… 瞬?!」
「にゃあ〜ん」
耳をぴこぴこと動かし、じゃれついてきた。ああ、何と愛らしい… ではない。いつからこの子は猫になったのだ?
「アフロディーテ」
アテナの声に、はっと我に返る。
「あなたが探しているのは、この白い瞬ですか?」

私はつい「そうです」と答えそうになる。
何故って、この白猫瞬の愛くるしさといったら。
つぶらな瞳は疑うことを知らず、頬を薔薇色に染めて私に抱きついてくるこの子を、どうして遠ざけることができよう。
「あふろ」
「何だ、瞬」
抱き上げると、頬を寄せてきた。
「だぁ〜いすき」
ああ、このまま逝ってしまいたい。
しかし、嘘はつけないのだ。どこかで本物の瞬が、私を責めながら泣いているかもしれないではないか。
「アテナ、御厚意に感謝致します。しかし… 私の知っている瞬に、このような白い耳と尻尾はありません」
断腸の思いだ。
「そう、残念です。瞬、こちらへお戻りなさい」
「えーーーーっ あふろ、しゅんのことキライ?」
ぐっ…
キライな訳なかろう!
「あふろにいらないって言われたよお。にゃああああ」
「ち、ちがっ…」
「うわああん」
ああ、私はまた瞬を泣かせてしまったのか。

「では次の質問に移ります」
アテナは淡々と進める。
「瞬!出てきてください」
「なーに?僕になんか用?」
またもアテナの後ろから瞬が現れた。
ただし今度は黒のレザージャケットに黒のショートパンツ、ロングブーツ、首輪を巻いた上に鞭を携え、頭から黒い猫の耳、腰から黒い尻尾が伸びている。
「瞬! な… なんて格好を?!」
「アフロディーテ、あなたが探しているのは、この黒い瞬ですか?」
眩暈がした。どこぞの御伽噺に、こんな展開があったような気が…
瞬はつかつかとこちらにやって来て、尻尾をくるりと私に巻きつける。
「ねえ、アフロ。僕と、アテナの前じゃ言えないようなこと、したいんだよね?」
アテナの前じゃ言えないような、とは、あんなことやこんなことを指すのか …って、妄想してしまったではないか。この黒猫瞬の笑みは狡猾で、とても13歳とは思えない。隠れた欲望をつつき出されるような錯覚に陥る。
あんなことやこんなこと… はっ、いけない。自分よりも一回りも下の子供とこんな仲になって、ただでさえ後ろめたいのに。これ以上を望むのは瞬のためにも良くない!
「アテナ、瞬、すまない。私の知っている瞬に、猫の耳はないんだ」