アフロ瞬
Angel Trip | 4
誰かが僕を呼んでいる。
うるさいな。僕は今、すごく眠いんだから…。
それでも僕は、散々苦労して、やっとのことで重い瞼を少しだけ持ち上げることに成功した。
ぼやけた視界に金色の人が見える。教会の絵本で見た人にそっくりだね。
どうやら僕は、大天使の腕に抱かれているみたいだ。
とても暖かくて、心地いい。
「大天使がいる……僕は…死んだの?」
彼が何か言っている。よく聞こえないよ…。
え?なに?どうして?どうしてあそこに入ってしまったかって?
「どうして…かな?……薔薇に…アフロディ…テを……取られてしまいそう…だった…から…」
もうだめ、眠くてたまらない。
「も…いいでしょ…眠らせ…て…」
僕は、自分の身体が強く抱きしめられるのを感じながら、深い眠りの淵へと落ちていった。
私は瞬の身体を抱き上げると、薔薇の香気が届かない場所まで急いで運んだ。
「バカな!こちらへ来てはいけないと、あれほど言ったではないか!」
みるみるうちに瞬のバラ色の頬は血の気を失っていく。
「瞬!目を開けろ!眠ってはいけない!瞬!…瞬!」
私が必死に呼び続けると、瞬はうっすらと目を開けて微かに唇を動かした。
『大天使がいる…僕は…死んだの?』と。
「大天使などいない、私だ!…縁起でもないことを言うな!」
瞬の瞳が左右に揺れている。意識がハッキリしていない。
私は激しく混乱していた。あれほどダメだと言ったのに、なぜ扉を開けてしまったのか。
「どうして!どうしてあそこに入ってしまったんだ!?…瞬!」
とぎれとぎれの瞬の言葉に、ガラス越しに自分を見ていたときの瞬の様子が甦る、時折のぞかせていた、瞬のさみしそうな顔…。
それでも私は「なぜ?」と問うことをやめることが出来なかった。
私の腕の中で瞬は目を閉じると、すぅ…と息を吐いた。
「そんな…瞬…ダメだ…」
私の為に咲いている、私の薔薇に、私の大切な人を奪われるなんて…。
私は瞬の身体を強く抱きしめると、小宇宙を最大まで燃やしていった。