氷の戸惑い

 氷河瞬

 僕がどれだけ君を好きか、君だけが知らない | 3

僕は氷河に背を向けたまま、後ろに手を組んで『んー』と伸びをした。
目を細めて僕を見詰めているだろう氷河の視線を感じる。
空を見上げると、黄色い葉がくるくると回りながら、僕の顔めがけて落ちてくるところだった。


そういえば、紫龍がこんな事を言っていた。
「まるで瞬は太陽で、氷河は陽の光を追いかけるプライドの高い猫だな」
紫龍曰く、太陽の暖かい恵みを自分だけ享受したいと思ってる、ワガママな猫なのだそうだ。
星矢は「そうだそうだ、あいつ、独占欲強いしな」と言って大笑いしていた。
でも、「猫ってガラかよ!どっちかっていうと、忠実な大型犬」とも言ってたっけ。
氷河がいつも僕を追いかけているのは知っていたけれど…本人以外に言われちゃうのってなんだか微妙。
星矢がからかい半分で「おまえはどうなんだよ」って言うから、 「僕の方が猫って感じじゃない?それに、氷河は見た目よりもずっとあったかいよ」って言い返したら、しばらく絶句したまま固まっていた。
紫龍は薄々わかってたみたいで、「やれやれ仕方のない奴らだ」と苦笑していた。


僕は君が何も言わなくても、君の気持ちに気付いていた。
あんな瞳にいつも曝されていたら…イヤでもわかってしまうじゃないか…と、声には出さず唇だけで形にする。
戸惑って、悩んで、迷ったけれど、僕は自分の気持ちにも気付いてしまった。


それなのに…。


君は自分の想いだけで手一杯で、僕の心を覗いてみようともしないんだ。
僕を見ているようで、実は何も見ていないって事にすら思い至っていないみたい。
僕が氷河の瞳を見るように、氷河も僕の眼をしっかり見てくれさえすれば、君はそんなにも苦しまなくて済むはずなのに…。
怖れる事など何もないのだから……ただ一言、言って欲しい。




じれったくて憎らしいけれど、僕は待つ。
それが君の蒼い瞳に絡め取られてしまった僕の、ささやかな抵抗なんだ。