氷の戸惑い

 氷河瞬

 僕がどれだけ君を好きか、君だけが知らない | 4

オレンジ色だった空がピンクから藍色へと彩りを変えていた。
落ち葉を踏む音が強くなり、すぐ側にまで氷河が近付いて来ている気配がした。



タイムアップ。



僕は肩の力を抜いて溜息をひとつすると、本日一番の極上スマイルを浮かべて氷河の方へと振り返った。
僕が突然振り向いたせいで彼はぽかんとして立ち止まり、しばらく僕の顔に見とれていた。
氷河の顔が赤いのは、どうやら夕日のせいだけではないみたいだ。
僕はさらに微笑みを深め、氷河の腕に自分の腕を絡ませると、強制的に回れ右をさせた。

「ね、お腹空いたからもう帰ろ?」

困惑気味に見下ろしてくる氷河に、首を傾げてにっこりと微笑む。
もちろん、僕の『にっこり』に氷河が絶対に勝てない事は承知の上で、だ。
氷河は目許で笑うと、少しの安堵を含ませてこくんと頷いた。




意気地なし…。




僕は俯いて、氷河に聞こえないようにつぶやいた。