氷の戸惑い

 氷河瞬

 ものがたりは未だはじまらず | 4

ふと気付くと、瞬は足を止め、橙色に染まり始めた空を見上げている。


僅かな微笑みを唇に乗せ、切れ長に細められた目は、今、どんな色をしているのだろうか…。
一歩一歩と瞬に近付く距離と共に、その瞳に自分の姿だけを映したい、細い身体をこの腕に包み、体温を感じたいという思いがどんどん膨らんで胸を苦しくする。
俺は、もうこの狂おしい気持ちを、胸の中に抱えておくだけでは耐えられない所にまで来ていた。
だから今日、持てる勇気をありったけ掻き集め、瞬を散歩へ誘った。


しかし、瞬はどうなのだろう?


俺のことは一緒に戦ってきた仲間…としか見ていないはずだ。
その彼に、一方的に己の気持ちをぶつけてしまった時、俺は『瞬の信頼する仲間』という立場さえ失ってしまうかもしれない。
そう思うと、あれほど熱を持っていた身体が急激に冷えるのを感じた。


今日こそは…と、強く決心して来たつもりなのに、いざとなるとだらしがないものだと思う。
視線を落とすと指先が細かく震えていた。
俺は、自分の不甲斐なさに、ひっそりと嘆息した。