イオ瞬

 通り雨 | 3

「あ、そうだ。沙織さんならきっと保護してくれる」

遠い親戚で学友でもある彼女は、以前にも瞬が捨て猫を保護した際に快く引き取ってくれた。
すでに何匹もの犬猫他いろいろ…飼ってはいるが、そこに1匹増えようとびくともしない豪邸に住まわっているのだから、今度もきっと大丈夫だろう。
もし沙織自身が飼わないとしても、彼女の人脈をもって最高の里親を見つけてくれるに違いない。
瞬は、よし、と頷くと携帯を探して鞄をかき回した。

「あ、あれ?もしかして、携帯持って来るの忘れた?」

普段から特に携帯をいじるタイプではない瞬は、割と頻繁に携帯を自宅に置き忘れる。
その度に何故か兄にひどく叱られるのだが、瞬自身は特段不便とは思っていなかった。しかし、今度ばかりは悔やまれる。
自宅の充電器に繋がりっぱなしの携帯を思い、最良の解決策を断たれた瞬は本格的に困ってしまった。
──連れて帰ってしまおうか。
いや、たぶんこの時間だと兄も帰宅しているだろうから、何を言われるかわからない。それは、まずい。

うーん…、と暫くしゃがみこみ、考え込んでいた瞬が唐突に勢い良く立ち上がった。
傘は段ボール箱に差し掛けたまま。

「ちょっとまっててね、すぐ戻るから!」

そう言い残すと、瞬は雨の中を全力で走り出した。