イオ瞬

 通り雨 | 6

「あっ、この子!」
「ああ。開いたままの傘が落ちていたから、危ないと思って拾い上げたらこいつがいた。まさか、そのままにしておく訳にもいかないだろう?だから連れて帰る事にしたんだ」
「……そうだったんだ、よかったぁ」

ほう……と、瞬が安堵の息をつく。
本当に心配していたのだろう、ようやく笑みを見せた瞬にイオも微笑んだ。

「あの……」
「ん?」
「この子、イオさんのおうちで飼うんですか?」
「あー…、まだ決めていないが、里親が見つからなかったら飼うことになるかな」
「そう、ですか……」

「里親」という言葉を聞いて、瞬は僅かに俯いた。

「もしよければ」

若干勢い込んだイオの口調に瞬が顔を上げる。すると、イオも自分の勢いに自分で驚いたような顔をしていた。
ぱちくりと見詰める瞬に、イオは己を落ち着かせる為にふっと息を吐き出す。

「もしよければだが……時々うちに様子を見に来ればいい。君も気になるだろう?」

願ってもない申し出に、瞬の顔がぱあっと明るくなる。

「いいんですか?」
「ああ、もちろんだ。いつでも来ればいい」

頷いてやれば、満面の笑みが返って来た。
その花が咲いたような微笑みに、イオの心臓が騒ぎ出す。
よかったね、よろしくね、と胸元の仔猫に無邪気に手を伸ばす瞬には、イオの真っ赤な顔は見えていなかった。