カノン瞬
vacances バカンス | 6
リビングの隣は広々としたダイニングと、もうひとつミニバー付のリビングがあり、
海を望む窓、その反対側である島の森を望む窓、どちらも大きく開け放たれて全く違う景色を見せていた。
海側はウッドデッキからプールへつながっており、並んだデッキチェアが光を浴びている。
明るい日差しの作るコントラストに、このままプールに飛び込んでしまいたい気分にさせられた。
続くキッチンは本格派でそれなりのワインセラーも備え、シェフを招いてのパーティーにも十分対応できそうだった。
そして、ゲストルームが2部屋あり、繋がる長い廊下の先にメインベッドルームがあった。
キングサイズはありそうな大きなベッドがひとつ。そして、部屋からは直接プールに出られるようになっている。
ベッドルームからのびるテラスには、プールと海を両方見渡せるジャグジーと、濡れた身体のままでもくつろげるダブルベッドが設えてあった。
全体的にシンプルな調度で整えられてはいるものの、あまりの贅沢な作りに瞬は呆気にとられていた。
「すごいね……こんなところに僕たち二人きり?」
瞬は、追いついてきたカノンを不安げに見上げた。
「俺と二人ではイヤだったか?」
カノンは僅かに表情を曇らせた。慌てて瞬はブンブンとかぶりを振る。
「違う!そうじゃなくて、なんかすごく豪華で広いからびっくりしたんだ…」
そして、分不相応で…と、呟いた。
瞬は時々思うことがある。カノンには自分よりももっと相応しい相手がいるのではないか、と。
だから、カノンの隣にこうしているのは夢のように思われてしまうのだった。
「……瞬」
瞬が気後れしてしまうのは分かっていた。
しかし、カノンにはここでなければならない理由があった。
「もう二度とこんな機会、無いかもしれないだろう?だから、これくらい贅沢してもバチは当たるまい」
カノンは悪戯っぽい顔をしてニヤリと笑った。それがまるで少年のようで、瞬は声を立てて笑ってしまった。
そうだった、ここはカノンが瞬の為に用意してくれた「楽園」なのだ。
瞬は改めて目の前に広がる真っ白な砂浜と、煌めくエメラルドグリーンの海を見渡した。
絵画のように美しい風景とやさしく髪を揺らす潮風に、さざめいていた心がすうっと凪いでいく。
そして、カノンの方を向くとにっこり微笑んだ。
「カノン、こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとう」
南国の花のように明るく笑う瞬に、カノンは目を細めた。