双碧のやすらぎ

 カノン瞬

 vacances バカンス | 7

打ち寄せる波音の合間に、水のはねる音と、瞬の笑い声が聞こえていた。


「カノン、カノン!早く来て!可愛い魚がたくさんいるよ」
白い肌を惜しげもなく晒した瞬が、浅瀬から手を振っている。
早速、服を脱ぎ捨てて、二人はプライベートビーチに下りていた。
服を着ていると華奢に見えるが、それは聖闘士のこと、カノンのようにがっちりとしてはいないけれど、 無駄のない筋肉がしっかりとついた瞬の健康的な肉体に、水の滴が玉のように光りながら滑り落ちていた。
「やはり、目の毒だったな」
カノンは独り言ちると、苦笑いをしながらゆっくりと瞬に近づいていった。
足許の砂が、歩くたびにきゅっきゅっと鳴く。


カノンがこのヴィラを選んだ訳のひとつがこれだった。


南の島のリゾートといえば、海。

カノンは、たとえそこがセレブ御用達のリゾートだとしても、どんな輩がいるか知れない浜辺に瞬を行かせる気にはなれなかった。 瞬の裸体を他人の目に触れさせるのは、我慢ならない。ただそれだけの理由なのだが。
だから、点在する他のヴィラからも離れ、プライベートビーチを持ったこの場所はうってつけだったのだ。
他に誰もいないせいか、瞬は思い切りはしゃいでいる。そんな瞬を見ているのは自分だけだ。


瞬の姿が眩しいのは、この明るい陽の光のせいだけではないとカノンは思ったのだった。