双碧のやすらぎ

 カノン瞬

 vacances バカンス | 9

幾度となく口づけを交わし、抱き締め合った二人だったが、夜を共にしたことはなかった。


カノンと二人で旅行をするという事は、そういう事…になるというのは瞬にもわかっていた。そして、望んでいた事でもあった。
大きく包み込むようなカノンに守られ、慈しまれるのは心地良い。しかし、それだけでは満足できぬほど瞬の気持ちは強くなっていた。 未知の行為への恐れとカノンの激しい眼差しに思わずおののいてしまった瞬だったが、 カノンに愛されたい、それ以上にカノンを愛したいと思う気持ちに変わりはなかった。


瞬は、カノンの逞しい背中にしなやかな腕を回すと、ぎゅっと抱き締めた。


「……瞬」
激情のままに抱き締めてしまったが、一瞬見せた瞬の脅えた表情に、カノンは迷っていた。
はじめはこの危なっかしい少年を見守っていくだけでいいと思っていたのだ。
しかし日々美しく成長していく瞬を見ているうちに、いつしか言い知れぬ焦燥感に苛まれるようになっていた。 そして己の内に点る情欲の炎を認めたカノンは、瞬の心も身体も自分のものにする為に、この閉ざされた楽園を訪れたのだった。
だが、強引に組み敷いたとして何になろう。瞬には愛される喜びを味合わせてやりたいのに…。


自分の背中に回された瞬の腕に込められた力で、カノンは我に返った。