抜け駆けなんて許しません! | 2

それからあっという間に一ヶ月が過ぎハロウィン当日。

上田城のある一室では、佐助がこの日の為に作った可愛らしい衣装を片手に、幸村に一回でいいから着てくれと土下座しそうな勢いで懇願している最中である。

「お願いだよ旦那!ほんのちょっとでいいから着てみせてよ!」

「無理を言うな佐助!こんな女子が着るような衣装着れるわけなかろう!」

佐助の必死の願いも虚しく幸村はなかなか衣装を着ようとはしない。
あまりの拒否っぷりに佐助が少し気の毒に思えてきたが、幸村がここまで拒むのも無理はないだろう。
何故なら、佐助の手に握られている衣装は幸村の言うとおり女物で、裾の部分がやけにヒラヒラとしたスカートになっている。
おまけに丈もかなり短めなので、普通なら絶対に着たくはない代物のはずだ。
また、近くに箒が置いてあるところからして、おそらく魔女をイメージしたのだということも見て取れる。

「大丈夫だよ!旦那なら絶対似合うからさ!ね?」

「似合うわけあるか!だいたい、似合ったら似合ったでそれも複雑でござる…!」

「えー、絶対可愛いと思うのになぁ。まぁ、そんなに嫌なら仕方ないか…。あーあ、せっかくお団子たくさん食べさせてあげようと思ったのになぁ…。」

「団子…?」

さっきまではまったく聞く耳を持っていなかった幸村だが団子という言葉に僅かに反応を示した。

「あれ、旦那知らないの?どっかの国では今日こういう格好をすると甘い物がたくさん貰えるらしいよ。だから旦那にも普段頑張ってる御褒美にお団子たくさんあげようと思ったんだけどね〜。でも旦那は欲しくないみたいだし俺様が全部食べちゃおっかなぁ…。」

「まっ、待て佐助!着る!ちゃんと着るから俺にも団子をくれ!」

「えっ、ほんとに!?じゃあ、お団子持ってくるからちゃんと着替えておいてね!」

どんなに嫌でも団子の誘惑には勝つことができなかった幸村が、嬉しそうな顔の佐助とは対照的なひきつった顔で衣装を受け取ろうとした時、厄介な人物がもう一人、勢いよく部屋の襖を開けて中に入ってきた。