それは甘い恋の味 | 3
「そんなに美味いかい?」
引っ張られてすっかり伸びてしまった着物を気にしている慶次の隣では、幸せそうな顔をした幸村がりんご飴を頬張っていた。
「はい!慶次殿も一口いかがでございますか?」
「いいのかい?」
「もちろんでござる。でも、少しだけでございますよ。では慶次殿、あーんしてくだされ!」
「えっ…?」
これには慶次も驚いた。
まさか、こんな恋人っぽい真似を幸村がするとは思っていなかったのだから当然だろう。
「食べないのでございますか…?」
いつまでたっても口を開けない慶次に、幸村はりんご飴をさしだしながら、またしても仔犬のように小首を傾げていた。
それにしても、手を繋ぐのは駄目で、これはOKなんて、幸村の破廉恥の基準はよく分からない。
「いや、もらうよ!ありがとな!」
しばらく思案したあとに慶次が口を開けると、『あっ!』という声と共に幸村が倒れかかってきた。
慌てて支えた為、幸村が転ぶことはなかったが、慶次の方に向いていたりんご飴は、当然ながらベチャッという音をたてて慶次の顔にくっついた。
「「あっ…。」」
その後、りんご飴のおかげでベタベタになった顔を洗うため、慶次と幸村は人混みを抜け出し、祭りが行われている場所からは少し離れた川原まできていた。
「んー、なかなか取れないもんだな。」
さっそく慶次は川の水を顔につけてみたのだが、いまだにベタベタはとれない。
思ったよりも強力らしい。
「まことに申し訳ございませぬ…!」
「いや、いいって!幸のせいじゃないしな!」
慶次の言う通り、よろけたのは幸村のせいじゃない。
急に子供がぶつかってきたために、バランスを崩してしまったからだ。
しかし幸村は、さっきから謝りっぱなしである。
「しっ、しかし…、某がもう少ししっかりしていれば、このようなことには…。せめて何かお手伝いを!」
そう言って幸村は、袂を水につけたかと思うと、そのまま慶次の顔を拭いだした。
「何やってんだよ!そんなことしたら、せっかくの浴衣が汚れちゃうだろ?」
「洗えば大丈夫でござる!このくらいさせてくだされ!」
それを慶次は必死にやめさせようとしたが、幸村も決して引こうとはしない。
「駄目だって言ってるだろ!」
なかなか諦めない幸村の手を掴めば、やっと動きが止まった。
それと同時に気まずい沈黙が訪れる。
しばらく無言状態が続いたかと思うと、どちらからともなく二人の顔は近づいていき、僅かな息づかいさえも聞こえるような距離になった時、ついに二人の唇が重なった。