suit on you | 4
採寸に緊張する間、小十郎はこちらを振り返りつつ生地を見ている。
政宗の祖父の代からスーツの仕立てを引き受けているという店は、古いながらも洗練された雰囲気があった。
「…坊ちゃんならまだ大きくなるかな。成人式近くなったらまたおいで」
「はい…」
二十歳を迎えるまでに小十郎までとはいかなくても、政宗くらいたくましくなれたらいい。
Tシャツの上から胸をぺたぺた触ると、老店主は穏やかに微笑んだ。
「…小十郎、おまえもそろそろ新しいのを仕立てたらどうだね」
「…スーツよりはシャツだな。この白とアイボリーと……水色もいいな」
今あるスーツに合いそうな色だと幸村は思った。スーツの似合う人はここからもう違うような。
こぢんまりとした店内をうろつく間に、老店主の息子がスーツの生地を何種類か見立ててカウンターに出している。
小十郎が出された生地を見ながら手招きしてくる。行くと青みがかった濃いグレーの生地をあてがわれた。
「……違うな。紅っぽい方がいいか…そっちの黒に近いのは」
「淡色のシャツと、細いストライプのタイなんか良さそうかな。スーツは伊達の若くらい細身にして」
小十郎は機嫌よく次々と生地をあてがって、似合うものを探ってくれている。
「…若旦那、シャツとタイあるか? さっき言ってた感じの、着せてやってくれ」
「随分とこだわるじゃないか。何かの映画みたいだねぇ、小十郎」
「こいつは何も欲しがらなくてな。今日だって無理やり連れて来たようなもんだぜ」
「…伊達の若の言う通りだな。…真田の坊ちゃん、もっとオジサンたちにワガママ言っていいってよ」
…そんなにしてもらうと申し訳ない。
恐縮する幸村に、店主親子はお代は出世払いでいいよと言ってくれた。
映画のヒロインばりに取っ替えひっかえ試着させられ、ようやく生地が決まった時には腹の虫が鳴いていた。
「…仮縫いの時に連絡入れるから。小十郎、体型は変えてないだろう?」
「一応変わってないつもりだけどな……でも最近太ったかも知れねぇ」
…メシが美味くなったからな。腰周りを触りながら小十郎は独身だという若旦那に笑ってみせた。