suit on you | 5
出世払いと言われたからには、学校を出たらしっかり働かなくては…。
スーツの代金など伊達組がさっさと支払ってしまっていることは露知らず、幸村はゼロの数を考えていた。
「…冷めるぜ」
何を考えているかは予想は容易い。小十郎は苦笑を隠さず皿をつついた。
「小十郎さんがいつも素敵なのは、ああやってしっかり作ってもらってるからなんですね」
「…褒めても何にも出ねぇよ」
「俺、毎朝ドキドキします…。スーツ姿、かっこよすぎて」
思い出すだけで顔が緩んでしまう。休みが明けたらまた見られるのに、胸が高鳴って仕方ない。
「…好きなのはスーツを着た俺だけか?」
「…っ……えーと、…その、…」
不意に小十郎の表情が変わる。
穏やかな雰囲気を潜め、野生味あふれる目の色にぞくりと肌が粟立った。
「…俺は毎朝、おまえの制服を脱がせたくて仕方ねえ」
「は、はっ、破廉恥です朝からそんな!」
テーブルをひっくり返す勢いで幸村は飛び上がった。自分がときめいていた傍で、そんな目で見られていたなんてある意味ショックだ。
「…冗談…ですよね」
「…冗談言ったように見えるか」
目線も声も、反則だ。ぞくぞくして、ドキドキしてしまう。
額に浮いた変な汗を拭って、ちらっと小十郎の方を見ればまだ獣の表情を隠していない。
…そういえば、今日も。
仕事用ともフォーマルとも違った上着に綿の襟つきシャツ。休日だから着崩してはいるが、そのバランスがまたいい。
彼の服装をあらためて見ると、適当に着てきたTシャツが恥ずかしいような気がした。
「……新しい服、ちょっと見繕ってくか」
「…安いお店でいいですよ」
「…。…少しはオジサンにワガママ言えよ」
仕立て屋の親子よろしく言うと、小十郎はさっさと皿の上の料理を綺麗に平らげてしまった。